2024年4月8日午後6時26分、作家の宗田理先生が肺炎のため名古屋市の病院で死去した。95歳。
宗田理先生と言えば、「ぼくらの七日間戦争」など、『ぼくらシリーズ』で有名だ。少年少女たちを中心に大ブレイクした「ぼくらの七日間戦争」だが、かくいう俺も大ファンで、子供のころに修学旅行先の部屋のテレビで友達と見てはまりにはまった。理不尽な社会や大人に対する少年少女の意見を代弁してくれるような、そんな夢と力に溢れた作品だった。
宗田理先生、ありがとうございました。ご冥福をお祈りします。
「ぼくらの七日間戦争」とは
「ぼくらの七日間戦争」は、宗田理先生によって1985年に発行された文庫書き下ろし小説で、『ぼくらシリーズ』の第1作目にあたる。物語は、東京下町の中学校に通う1年2組の男子生徒たちが、終業式の日に突如行方不明になり、荒川河川敷の廃工場に立てこもり、大人たちに対する反旗を翻すという内容。友情や勇気、青春の葛藤を描いており、映画化もされている。また、劇場アニメーション作品としても生まれ変わり、2019年に公開されている。さらに、『ぼくらシリーズ』は続編も刊行されており、宗田理先生は90歳を超えても執筆を続けていた。
以下、あらすじ
1学期の終業式の日、東京下町の中学校に通う菊地英治ら1年2組の男子生徒たちが突如として行方不明になる。親たちは英治らを必死に探すが、彼らの消息はつかめず、全く見つからない。実は英治らは、荒川河川敷の廃工場に立てこもっていた。そこで外にいる橋口純子ら女子生徒と、体罰によって大怪我を負った谷本聡と協力し、「解放区」と名付けた場所を作った。この「解放区」は、校則で抑圧される教師や勉強を押し付ける親に対して反旗を翻す彼らの拠点となる。突入してきた教師に対して様々な仕掛けで対抗し、悪い大人たちをこらしめるために奮闘する。
「ぼくらの七日間戦争」の作者、宗田理先生とは?
作者の宗田理(おさむ)先生は、1928年5月8日生まれ。東京生まれだが、8歳で医師だった父を失い、母の出身地の愛知県で育った。シナリオライター、編集者、PR会社経営などを経て作家に。「ぼくら」シリーズは「ぼくらの天使ゲーム」「ぼくらのラストサマー」なども有名。他の著書に「雲の涯」「13歳の黙示録」「天路」などがある。
日大芸術学部映画学科卒。シナリオライターや編集者などを経て作家となり、小説「未知海域」が直木賞候補になった。1985年に発表した「ぼくらの七日間戦争」が若者中心に支持を集め、88年に宮沢りえちゃん主演で映画化された。実はこれが宮沢りえちゃんの女優デビュー作だったりする。
15歳の美少女が『戦車』に乗って大人と戦うギャップが話題となって、毎日映画コンクール、日本アカデミー賞などの映画賞の新人賞を総なめにした。宮沢りえちゃんはこの作品を自分の原点としている。宗田理先生は2019年のアニメ映画「ぼくらの7日間戦争」にも声優として参加。世間に広く知られていたわけではないが、老齢になってもコツコツ仕事を続けていらっしゃったわけだな。
なお、先生の「ぼくらの」を冠したシリーズは、累計発行部数2000万部を超えるベストセラーになっている。10代をターゲットにした「YA(ヤングアダルト)」と呼ばれるジャンルの先駆けであった。宗田先生は子供時代に戦争を経験、敗戦後軍国主義が一転して民主主義となった社会に大きなショックを受けた。そのときの「大人は信用できない」という思いが、宗田先生の作品の原点となっている。
「ぼくらの七日間戦争」の主題歌は?
「ぼくらの七日間戦争」の主題歌を歌っているのは、「GETWILD」でも知られるTM NETWORK。今はもうかつての勢いはまるでないが、あの小室哲哉先生の作曲。とにかく歌詞がすごくいい。
すべてを壊すのではなく 何かを捜したいだけ すべてに背くのではなく 自分で選びたいだけ
Seven days war 闘うよ、僕たちの場所、この手でつかむまで Seven days war Get place to live、ただ素直に生きるために
「ぼくらの七日間戦争」の舞台、ロケ地は?
主人公の高校生たちが立てこもる廃工場のモデルとなっているのは、旧住友赤平炭鉱立坑跡周辺。東洋一と言われた4段ゲージが印象的な大きな炭鉱遺跡で、現在は予約すれば自走枠工場や炭鉱歴史資料館、赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設を見学できる。
住所: 北海道赤平市字赤平485
営業時間: 09:30~17:00
定休日: 月曜日、火曜日(祝日当たるときは直後の平日)、年末年始
料金: 入館無料、見学有料(市外の人は大人800円、小学生300円、市内の人は大人200円、小学生無料)
主人公たちが通う学校のモデルとなっているのは、夕張高校。 実際の夕張高校の外観や内観の写真素材を元に、学校のシーンが描かれた。
住所: 北海道夕張市南清水沢3丁目49
映画「ぼくらの7日間戦争」、キャストの現在は?
中山ひとみ役:宮沢りえさん
宮沢りえさんは女優として活躍中。2021年、三井のリハウスのCMに34年ぶりに出演。宮沢は白鳥麗子役で変わらないが、1女(娘役:近藤華)の母親となっている。
菊地英治役:菊池健一郎さん
菊池健一郎さんは「ぼくら」以降、『3年B組金八先生3』、『はいすくーる落書』など学園物を中心に活動していたが、2012年の時点で引退。
橋口純子役:五十嵐美穂さん
五十嵐美穂さんは2016年に映画「さとにきたらええやん」の制作協力をしていた。
堀場久美子役:安孫子里香さん
安孫子里香さんは結婚されて芸能界を引退。
相原徹役:工藤正貴さん
工藤正貴さんは1993年に引退し、クラブDJへ転身。
安永宏役:鍋島利匡さん
詳細情報は不明。
柿沼直樹役:田中基さん
田中基さんは1992年に映画に出演されているが、その後の詳細情報不明。
中尾和人役:大沢健さん
大沢健さんは俳優として活動されています。2012年のNHK朝ドラ「梅ちゃん先生」で注目を集めていた。
日比野朗(あきら)役:金浜政武さん
不明。
天野健二役:石川英明さん
不明。
宇野秀明役:中野愼さん
不明。
「ぼくらの7日間戦争」は2も作られている
映画の続編として「ぼくらの七日間戦争2」も製作されている。この作品では、青葉中学の生徒たちが無人島で大人たちとの戦いを繰り広げる姿が描かれている。が、主演であった宮沢りえちゃんなど前作のキャストの姿はなく、評価はあまり良くなかった。残念。
僕らの7日間戦争、アニメ版はひどい?
公式サイトより拝借。
宗田理先生ご自身が声優として登場したアニメ版「ぼくらの七日間戦争」は2019年製作。
俺は見たことがないのだが、どうやら…。
【 #ぼくらの7日間戦争 】
『ぼくらの七日間戦争』を現代へ。
“ユーモア”と“大人への反抗”が不在。
「ぼくら」の根幹が破壊された物語。現代の価値観や社会情勢を頑張って取り入れてたが、元気な子供の姿はなく、寂しい。
この作品が子供の心を解放するか?
否。大人を擁護し子供を萎縮させる。 pic.twitter.com/fegydYXQos— アラさん (@1_ARA_1) December 14, 2019
残念だ😅
若さとは年齢ではない
宗田理先生は、亡くなる寸前まで筆を取っていらっしゃった。95歳の高齢で、2024年3月13日にリライトした最新刊「ぼくらのイタリア(怪)戦争」(角川つばさ文庫)を出版したというから驚きだ。3月下旬には、取材まで受けている。宗田理先生の心の底には、戦争を経て経験した社会に対する強い反骨心みたいなものがあり、それが小説という形で著わされたものと思われる。それが長きにわたり、多くの少年少女に影響を与えてきたのだ。
今日が人生で一番若い日。
いくつになってもその精神で物事に向き合い、社会に対してこびへつらうことなく、子供のころの素直な気持ちを大切に、正しい眼で世の中を見つめて生きていきたい。
改めて、宗田理先生、ありがとうございました。
今回の記事は以上だ。最後まで読んでくれてありがとう!!