なぜ“あの悪魔”の物語に、いまだ人は引き寄せられるのか?
悪魔が少女に取り憑いた——たったそれだけの話に、なぜ50年経っても人は震えるのか。
『エクソシスト』シリーズは、ただのホラーではない。
恐怖の皮をかぶった、信仰と狂気のドキュメントだ。
その恐怖は、決して「架空のお話というわけではない」ところにも起因している。
リアルの要素も入っているから、怖いんだよ。参考記事☛(エクソシスト)カラス神父とメリン神父の“モデル”は?リアルとの境界線
でも、いざ観ようと思って検索するとこうなる。
「あれ、順番どれだっけ?」「2って評判悪いってマジ?」「最新作って正統続編なの?」
はい、そこからが“沼の入り口”だ。
俺がここで、混乱する時系列、正史・非正史、観るべき順番をズバッと整理する。
まずは以下をご覧あれ。
年代 | 作品名 | タイムライン | 正史 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1949 | 『ドミニオン』 | 過去(前日譚) | △ | 精神性重視・公開後発 |
2004 | 『ビギニング』 | 過去(前日譚) | △ | 怖さ重視・撮り直し |
1973 | 『エクソシスト』 | 本編 | ◎ | 初代、観なきゃ損 |
1977 | 『エクソシスト2』 | 本編続編 | ✕ | 評価最底辺 |
1990 | 『エクソシスト3』 | 本編続編 | ◯ | 原作者監督 |
2016 | 『The Exorcist』(ドラマ) | 本編続編 | ◎ | シーズン1のみ推奨 |
2023 | 『信じる者(Believer)』 | 正統続編 | ◎ | 1の直結続編 |
え、なに? 全然わからないって???
仕方あるまい。では、ご教授させていただこう!
「何を観て、何を切るか」——その判断を、観る前に間違えるな!
まずどれから観ればいい?『エクソシスト』初心者に最適な一本とは?
『エクソシスト』(1973)はシリーズの入口としてふさわしい?
結論から言うと、“ここから入らなきゃ何も始まらない”
1973年に公開された初代『エクソシスト』こそが、すべての原点であり、シリーズの基礎。映画史に残る名シーン──少女リーガンの首が回る、ベッドが浮く、悪魔の囁きが響く──これらは全てこの1作目から生まれている。
公開当時はアメリカでPG指定(13歳未満は親の同伴が必要)ながら、社会現象に。全米での興行収入は2億3000万ドルを超え、ホラー映画としては異例のアカデミー賞作品賞ノミネート。要は「格が違う」。
ストーリーも単独で完結しており、「予備知識ゼロでも観られる」という点で、初心者には最適な導入口だ。
怖いから観ない?
むしろ、怖さの“原点”を体験してから、他のホラーを評価すべきだと思うがね。
悪魔の正体やラストシーンの意味がわからなければ、下の2つの記事で解説しているからお勧めだ。
悪魔の正体はこちら☛エクソシストの悪魔の正体とは?パズズと名乗らなかった本当の理由とは
ラストシーンの意味はこちら☛映画エクソシスト、ラストの意味は?飛び降りた神父が選んだ「答え」
初心者に『エクソシスト2』や『3』はハードルが高い?
高い。というか、“つまずきポイント”になる。
『エクソシスト2』(1977)は、はっきり言って評価が低い。
内容は精神分析+神秘主義+超能力。…つまり「どこへ向かってるの?」状態。IMDbの評価は4.0台(2025年現在)で、シリーズ最低。俺個人としても「見どころが一周してカルト的」とは言えるが、初見には酷。
一方、『エクソシスト3』(1990)は出来がいい。ただし“理解力”と“前提知識”が必要。
これはウィリアム・ピーター・ブラッティ(原作者)が自ら監督した作品で、宗教的テーマと猟奇殺人を組み合わせた心理ホラー。前作の流れを断ち切りつつも、微妙に続編。つまり“初心者泣かせ”の構造。
結論:「1 → 3」の順番はアリ。でも「2」は、飛ばしてから“好奇心で戻る”くらいでちょうどいい。
公開順と時系列順、どっちで観るべき?
映画公開順 vs ストーリー時系列、理解しやすいのはどっち?
結論:“公開順”で観るべし。
理由は単純。シリーズの後発作品は“初代ありき”で作られてるから。
例えば前日譚『エクソシスト ビギニング』(2004)や『ドミニオン』(2005)は、どちらも“1973年版の補完”を意識している。
先に観ると「なぜこのキャラが重要なのか」が伝わりにくい。しかも、映像表現やテンポが全然違うから“逆に混乱する”。
それにストーリー時系列で観ようとすると、ビギニング→ドミニオン→1→2→3という流れになる。…いや、順番を整えても「質」がバラバラじゃ話にならん。
『エクソシスト ビギニング』と『ドミニオン』はどちらが先?
正確にはこうだ:
- 『ドミニオン』(2005):オリジナル版
- 『ビギニング』(2004):リメイク版(というより“撮り直し版”)
つまり制作順では『ドミニオン』が先。だが配給会社(ワーナー)の判断で「怖くない」と没にされ、代わりに『ビギニング』が作られた。結局その“幻のドミニオン”が翌年に公開された、という裏事情がある。
どちらがオススメか?
雰囲気で言えば『ドミニオン』のほうが“精神性”が強く、『ビギニング』は“娯楽性”が強い。
だがどちらにせよ、“初代を観てから”のほうが理解しやすいのは間違いない。
正史と非正史の境界は?“シリーズ扱い”されている作品とは?
『エクソシスト2』『3』は公式続編として認められているのか?
一応、両方とも“続編扱い”されている。ただし、製作陣のラインが違う。
- 『2』:初代監督フリードキンは不参加。脚本も別チーム。評価はボロボロ。
- 『3』:原作者ブラッティが自ら脚本・監督を担当。1の登場人物(ダミアン・カラス神父)が再登場。
つまり、2は“名前だけの続編”。3は“精神的な後継”。
俺としては、「2は飛ばして3を観ろ」というのが現実的な判断だと思ってる。
『ビギニング』と『ドミニオン』は正史から外されている?
これはややこしい。両方とも“公式制作”だが、どちらが“正史”かは明示されていない。
つまり、“どっちを正史と見なすか”は観る側に委ねられている。
公開順では『ビギニング』が優先されがちだが、宗教性や人間描写は『ドミニオン』が深い。
どちらも「初代以前のメリン神父の物語」である点は共通。正直、“どっちか一本でいい”。
怖さ・映像の古さで観る順番を変えるべき?
「怖さ順」ならどれを避け、どれから入るべき?
怖さというのは“観る側の年齢・感性”に依存する。でも、あえて言おう:
- 一番怖いのは 『エクソシスト』(1973)
- グロいのは 『ビギニング』
- 不気味なのは 『3』
- つまらないのは 『2』
つまり、“怖さ重視”なら 1 → 3 → ビギニング
“避けたい”なら 2 を最初にするのはやめておけ。
繰り返すが、「怖いかどうか」は結局、観る側の“感受性”で決まる。
☛ 『エクソシスト』シリーズは本当に怖い?怖いポイントを挙げてみた
俺の視点で“怖さのタイプ診断”まで載せてるから、興味あればどうぞ。
特撮や演出が古すぎてつらい作品はどれ?
当然、1973年版が一番“古い”
だが、“怖さ”に直結しているのはむしろその“古さ”だったりする。
アナログな撮影・本物のセット・本気の演技。CG慣れした今こそ、逆に“新鮮”に映る人も多い。
ただ、テンポは遅い。現代的な編集に慣れた人には「序盤ダレる」と感じるかもしれない。
そこを“通過儀礼”と思えるかどうか。そういう意味で、やはり1作目から観るのが一番安全だ。
他にもあります。こんな順番
【信仰テーマを重視したい】→ 1 → ドラマ → 3
この3作には、「怖さ」ではなく「人間と神の関係」が通底している。
ホラー映画でありながら、“神学的ドラマ”として成立しているのがこの順番の特徴だ。感情ではなく、思考で震えたい人に、間違いなく刺さる。恐怖が終わったあとに、“祈り”だけが残る。
そんな映画体験を求めるなら、このルートを選べ。
【怖さを体感したい】→ 1 → ビギニング → 3
ジャンプスケアもグロも“全部アリ”で観たい。そんな“ホラー耐性はあるけど鈍ってきた”大人向けルートだ。映像が古い順に並べることで、「怖さの手法の進化」も体験できる。
精神的な怖さ→視覚的な怖さ→心理的な怖さへと、三段変化する構成。「怖い作品をちゃんと怖がりたい」人にとって最も濃度が高い順番になる。「怖い映画って、ちゃんと怖がらせてくれなきゃ意味がない」そう思ってる人間には、この3本で“原点から極限まで”体験させてやれる。
【ストーリー理解優先】→ 公開順でOK
正直、結論からいうと「見たい順に見ろ」って感じでもあるんだが…。
ドラマ版『The Exorcist』(FOX)は映画シリーズとどう関係している?
『The Exorcist』ドラマ版は正統続編か、それともパラレル?
これは“意外と知られていないポイント”だが、FOX制作のドラマ版(2016〜2017)は、初代映画の“続編”として作られている。
特にシーズン1では、物語の後半で“衝撃の事実”が明かされる。それによって、視聴者は「これはパラレルじゃなく、確かにあの映画と地続きだった」と気づく仕組みになっている。
つまり、“パラレルではない”。映画版1作目の“何年も後”の物語。
ただし、シーズン2では設定がほぼ切り替わって別の物語が展開するため、シリーズとしての統一感は弱い。
観るならシーズン1だけで十分。ストーリー的にもキリが良い。
映画を観てからじゃないと楽しめない?
「楽しめないことはない」が、「気づけないことは多い」
というのも、ドラマ版は“あの母娘”の現在を描いている。しかも、名前を変えて登場しているから、観ていない人には“ただの一家”に見えてしまう。
細かい演出、部屋の構造、小道具──全部が1973年版を踏まえた作りになっている。
結論としてはこう:
- 映画を観てからなら「おっ、これって…!」という感動がある
- 映画を観ていないと「普通の悪魔モノ」として終わる
もったいないのは後者。どうせ観るなら、1作目→ドラマ版の順がベストだ。
2023年の新作『エクソシスト 信じる者』はどこに位置するのか?
『信じる者(Believer)』は1作目の正統続編として認められている?
これは事実ベースで「正統続編」とされている。
制作したのは、『ハロウィン(2018)』のリブートで成功を収めたデヴィッド・ゴードン・グリーン監督のチーム。彼らは明確に「1973年版の直接の続編」として『信じる者(The Exorcist: Believer)』を打ち出した。
登場人物の中にはリーガンの母・クリス・マクニールも再登場。キャストも同一人物(エレン・バースティン)を起用している。
これは“完全な正史扱い”で問題ない。
ただし、観た人の評価は分かれている。「新しい価値を示せたか?」という点では、賛否アリだ。
だが“位置づけ”の上では、『エクソシスト』(1973)の正統な続編である。
“リメイク”ではなく“リブート”なのか?
これも整理しておこう。
『信じる者』は“リメイク”ではなく、“リブート”でもない。“正統続編の新3部作”の1作目という扱いだ。
つまり、
- 1973年版 → 『信じる者』→(次作に続く)
という“直列”構造。世界観もキャラも“そのまま引き継ぎ”で、焼き直しや再構築ではない。
「ハロウィン」新3部作の成功モデルを参考にしているので、「1作目の続編だけを正史にし、それ以外はなかったことにする」という構成が意図されていると考えていい。
全作観る価値はある?“飛ばしてもいい”作品はあるのか?
『エクソシスト2』はスキップしても問題ない?
“全く問題ない”と言い切れる数少ない作品だ。
というより、「観ないほうが混乱しない」とさえ言われている。
前述の通り、『2』は精神分析・超能力・昆虫学(!)など要素が盛られすぎて、1との整合性がもはや崩壊している。IMDbでも4.0台という“伝説的低評価”をキープ。これだけでも判断材料にはなるだろう。
もし「シリーズを全部観る」ことに意味を見出すタイプの人間なら止めない。
だが、「話を理解したい」「感情に入り込みたい」という目的なら、“スキップ推奨”だ。
『3』や前日譚は観ないと理解できない?
『3』は“知っておくと深みが出る”タイプの続編。ダミアン・カラス神父の“その後”を描いており、テーマも映像も一貫してダーク。
ただし、1973年版を観ていれば、最低限の背景は理解できる。
前日譚(ビギニング/ドミニオン)は、“知識として知っておきたい”人には価値がある。が、シリーズ全体の理解という意味では、観なくても問題ない。
むしろ、「観てから1作目に戻ると、ああそうか、と思える」程度の“補助輪”的ポジション。
以上、「エクソシスト 見る順番」に迷う人たちに向けて、“ちゃんと観たい人”が損しないように書いたつもりだ。
迷ったときは、まず1973年版。
そこから先は、興味のあるテーマを軸に広げていく。
それが、このシリーズを正しく味わう“王道”だ。
まとめ
- 『エクソシスト』シリーズは、順番を間違えると“損”するタイプの作品だ。
- 初心者はまず1973年の1作目から。ここだけは絶対に外すな。
- 『2』は飛ばしてもOK。むしろ“観ない勇気”が求められる。
- 『3』とドラマ版は、意外と評価が高い“掘り出し物”。
- 前日譚2作はどちらか1本で十分。
- 『信じる者(Believer)』は1973年の正統続編と明言されている。
- 配信順や画質にも差があるから、観る媒体も地味に重要だ。
まとめると、「順番こそが鑑賞体験の鍵」ってこと。ホラーってのは、情報戦なんだよ。
関連記事
『エクソシスト』の神父は実在したのか?モデルと背景に迫る考察
エクソシストの悪魔の正体とは?パズズと名乗らなかった本当の理由とは
映画エクソシスト、ラストの意味は?飛び降りた神父が選んだ「答え」
『エクソシスト』シリーズは本当に怖い?怖いポイントを挙げてみた
『エクソシスト』のように、「考察に値する作品」は他にもある。
作者の意図と、観る側の妄想が交錯する“考察系”作品をまとめたページはこちら👇
映画を1000本見た社会科教師の考察(映画・漫画・アニメ・小説)