「並ばない万博」は幻想だったのか?
あの日、夢洲に向かった人々の多くが信じていた。
「今回は違う」「並ばずに楽しめる万博だ」と──。
だが現実は、雨と行列と絶望のフルコース。
スシローで8時間、東ゲートで2時間、トイレですら20分。
情報と希望に踊らされた俺たちは、誰の“嘘”を信じて並ばされたのか。
この記事は、現地に降り立った者たちの証言とSNSの記録をもとに、「なぜこうなったのか」「どうすれば避けられたのか」を洗い出す、いわば“万博という信仰”への検証報告書だ。
信じたあなたこそ、読むべきだ。
万博は並ばないって本当?
「並ばない万博」は誰が言ったのか?公式発言はどこまで信用できる?
誰が言ったか──まず、そこをハッキリさせようじゃないか。
一部の人間は、まるで政府や万博協会が「絶対に並ばせません」と公言したかのように信じ込んでいたが、実のところ、「並ばない万博」などという確約は、どこにも存在していない。万博協会自体は、「スムーズな動線設計」「入場分散の工夫」などを説明していただけで、断言はしていない。キャッチコピーのように「並ばない」をうたったのは、あくまで一部メディア、あるいはSNSを中心とした拡散だ。
たとえば、日経新聞は「混雑緩和策に注力」と書いていたが(※2025年3月掲載)、その文脈は「過去よりは多少マシにしたい」という程度のニュアンスにすぎない。それがいつしか、テレビ番組のコメンテーターやX(旧Twitter)上の発信で、「今回は並ばなくて済むらしい」「大阪の交通アクセスは改善されてる」などと伝言ゲーム的に膨張し、ついには「並ばない万博」という幻想だけが独り歩きを始めた。
そして厄介なのは、“言った”という明確な主語が存在しないことだ。誰が言い出したのかを特定するのは困難。まるで都市伝説のように拡散され、気づけば皆が“信じていた”。
つまり、「誰が言ったか」ではなく──「なぜ、信じるに足ると思ったか?」。この情報の連鎖反応に、メディア・SNS・視聴者が無自覚に加担してしまったという構図こそが、最大の問題だ。
実際の来場者数と“詰まり”状況はどうだった?初日レポートで検証
2025年4月13日(日)、初日の来場者数はおよそ18万人(協会発表)。これは当初想定されていた来場者数を大きく上回る数字であり、各所で混乱が発生するには十分すぎる規模だった。
そして、問題の核心はその“動線”設計にあった。
- 東ゲートでは早朝から人が殺到し、2時間以上の待機列ができた。
- 一部ルートでは1メートル進むのに15分かかるほどの滞留が発生し、実質的に人の流れが“静止”する時間帯すらあった。
- トイレや飲食店を探して右往左往する人々が各所で滞留、行列同士が干渉して“逆流”現象が起き、混乱を助長。
さらに、通路の幅員が十分に確保されていないエリアもあり、行列が簡単に“交錯”してしまう。これにより、「入場→園内移動→施設利用」という基本動線のすべてにおいて、ボトルネックが連鎖的に発生。
加えて、施設スタッフの誘導が徹底されていなかったという指摘もあり、場内での混雑緩和措置が後手に回った。
しかもこれは“想定外のトラブル”ではない。むしろ、事前に十分に予測できたはずの事態だったと考えられる。であるならば、その原因は“予測不足”ではなく、“設計の甘さ”そのものだ。
この初日の詰まり方を見るに、改善されなければ、今後のピーク時には「歩けない万博」どころか、「進めない万博」になりかねない。
東ゲートはなぜ止まった?手荷物検査と入場遅延の現場
混雑の最大要因は東ゲートのボトルネック。これは現地の目撃者やSNSの実況投稿を見れば、一目瞭然だった。
- 手荷物検査に1人あたり平均90秒かかるという見積もりは、あくまで“スムーズな場合”の話だ。実際には、傘・雨具・ペットボトル・カバンの中身確認で手間取る来場者が多く、1人に2分以上かかるケースも珍しくなかった。
- 入場者が集中した時間帯には1時間で3000人以上が列を成し、待機列は蛇行して敷地外にまで続いた。
- 本来ならばピークタイムに備えてゲートを開放すべきだったが、設置されたゲートの数自体が少なく、誘導員も十分に機能していなかった。その結果、検査場はパンクし、列は停滞。
さらに悪条件が重なった。2025年4月13日、開幕初日は生憎の雨。傘をさす来場者で通路は混雑し、検査前に傘を閉じるように言われた来場者が入口で立ち止まり、さらに滞留を招いた。しかも雨具を着た人々が検査後に荷物整理を行う場がないため、検査後の“再準備渋滞”まで発生した。
「詰まって当然」という言葉では済まない。これは設計段階の見通しの甘さと、運営初動の準備不足が生んだ“人災”と言ってもいいだろう。
ブリッジとして言うなら──入ってからも地獄は続いた。検査を抜けた瞬間、訪れるのは解放感ではなく、新たな行列のスタート地点だった。
どれくらい並んだ?
「スシロー279組待ち」「くら寿司8時間待ち」は本当なのか?
SNS上では「スシローで279組待ち」「くら寿司8時間並んだ」という投稿が話題になった。これを見て「さすがに盛ってるだろ」と思った人もいたかもしれない。だが、Yahoo!リアルタイム検索を使って検証してみると、同様の内容が何件も投稿されており、決して一部の誇張では済まされない現象だったことがわかる。
- スシロー:整理券配布後、5時間以上経過しても呼ばれず、泣く泣く諦めたという証言が複数
- くら寿司:午後3時の時点で「本日の受付は終了しました」の貼り紙が店頭に出され、入口に人だかりができる騒ぎに
さらに、他の飲食店でも似たような話は多数報告されている。たとえば、万博会場内にある某うどんチェーンでは、「14時時点で売り切れ」「会計に30分以上かかった」といった投稿が相次いだ。
このような現象を通して見えてくるのは、単なる“混雑”を超えた“供給不足”だ。飲食店のキャパシティが来場者数に追いついていない。飲食ゾーンが“見るだけの展示”になってしまった人も多い。
つまり、“ご飯難民”になった来場者は相当数いた──どころか、「座って温かいものを食べる」こと自体が贅沢になっていたのが、初日の現実だったというわけだ。
食べられない、トイレにも入れない?現地“行列地獄”の実態
万博なのに、飯もトイレも入れない──これ、冗談じゃなく現実だ。
- フードコートで3時間待ち。待っても「ご飯が売り切れていた」という報告もあり、列の途中であきらめて立ち去る人もいた。
- トイレに20分以上並ぶケース多数。特に女性トイレは列が途切れず、子連れの母親が周囲に助けを求める場面も目撃された。
- 高齢者や小さな子ども連れは泣く泣く途中退場。熱中症ならぬ“冷え症”でダウンしたとの報告もあり、医療テントへの搬送も発生している。
さらに、「飲食列」と「トイレ列」が隣接してしまう場所もあり、列の流れが錯綜。食べ物を手にしても、座って食べられる場所が見つからず、立ち食いしている人、地面にしゃがみ込む人、子どもにだけ先に食べさせる親など、まるで野外フェスの終盤のような光景があちこちで展開されていた。
「ご飯の列を抜けたら、トイレの列」「トイレを抜けたら出る列にハマる」…そんな不毛なループに陥った人が続出。もはや万博版すごろくというより、“スタートに戻る”ばかりの地獄ルーレットだった。
雨と寒さで“難民化”?屋根なし・導線なしの混乱状況
4月とは思えぬ気温12度+雨+風。本来なら春の陽気に包まれているはずのこの時期に、体感では冬の戻りのような寒さが来場者を襲った。
- 傘をさせないエリア多数。強風で傘が煽られ、危険回避のために閉じるよう指示される場面もあった。
- 避難スペース不足。テントや屋根のある場所が限られており、文字通り「雨宿りの取り合い」が発生。
- ベンチも濡れて使えず。立ち尽くすしかない人が続出し、地面にレジャーシートを敷こうにも、風でめくれ上がり断念する人が多かった。
結果、「座れない」「逃げられない」「温まれない」の三重苦に加え、地面にしゃがみ込み、子どもを抱えて身を寄せる家族の姿も見られた。防寒対策をしていなかった層──特に子連れや高齢者──には非常に過酷な状況だった。
中には「この寒さと環境は、東北の仮設住宅にいた頃を思い出す」という声すらあった。言葉は過ぎるように見えるが、それほどまでに“安心して休める場所”が存在しなかった証左だろう。
「難民キャンプかと思った」という声すらあったが…あながち笑えない。言葉の選び方にユーモアはあるが、そこに込められた皮肉と悲鳴は無視できない。
では、そんな状況でも“並ばずに入れた人”は存在したのか?
並ばずに入れる方法はある?
並ばずに入れた人はどう動いた?入場タイミングと回避ルート
実際に“スムーズに入場できた”という報告もある。こうしたケースは少数派だが、条件がそろえば“混雑地獄”を回避することも可能だったようだ。
- 午前7時半〜8時台に並んだ人は比較的スムーズだったという報告が多い。開場直後の波をうまく先回りできたことで、手荷物検査にもほとんど待たずに通過できたという。
- 南ゲート(仮)は比較的空いていたというSNS情報も散見される。公式には公表されていないが、一部の出入口では団体客や関係者向け導線が使われており、その影響で一般来場者にも“すき間”が生まれていた可能性がある。
- 団体予約やバスツアーの利用者は、優先入場や別導線の案内を受けたケースがあり、「並んでない人たちを横目に、自分は列で待たされる」という不公平感を感じた来場者もいたという。
- また、ボランティア関係者のSNSでは、「8時前なら東ゲートでも5分待ち程度で入れた」との記録もある。つまり、“早朝”かつ“人の流れを避けた選択”をした人は、それなりに恩恵を受けていたということだ。
つまり、「時間」「入口」「手段」の3要素で明暗が分かれる。 朝を制した者だけが、並ばずに“別世界”を見た──ということだ。
ローソン、ファミマ、コンビニでの食事は現実的な選択肢か?
- 万博敷地内にも一部コンビニ(ローソン等)が存在しており、屋台や飲食ブースに比べれば「穴場」と期待された節もあった。
- しかし、コンビニにも長蛇の列が発生し、“入店制限”がかかる場面もあった。特に昼前後は、店舗の前に20人以上が並び、整理券や声かけによる入場管理が行われていたという情報もある。
- 弁当棚は午前中の早い段階で空になり、10時台にはすでに冷蔵棚が“スカスカ”状態に。ホットスナックに至っては、開始1時間ほどで売り切れが相次ぎ、唐揚げやアメリカンドッグは幻の存在と化した。
- ATMやコピー機を利用しようとする人も多く、店舗内の滞留時間が長引いた結果、入場の回転率がさらに落ちていたという報告もある。
「並ぶのが嫌でコンビニに行ったら、そこでも並んだ」──
それが現実。しかも、コンビニの商品は補充が追いつかず、周囲の店舗と連携した物流対応も見られなかった。飲食ブースで並び、諦めてコンビニへ。そこでも並んで、弁当がなかった。そのループを繰り返した人が、SNSに“食事難民”として疲れ切った表情の写真を上げていた。その虚無感は、文字では伝えきれない。
子連れ・高齢者はどうすべき?「安心して行ける時間帯」は存在するのか
この問い、答えるのがつらい。というのも、「子連れ・高齢者でも安心して行ける時間帯があるのか?」という期待に対して、現時点では明確に「ある」と言える材料があまりに少ないからだ。
- 午後3時以降になると「人が引き始めた」という報告もある。実際に入場ゲートや通路の混雑は多少緩和されていたようだ。
- しかし、その頃にはすでに人気店舗は“受付終了”や“材料切れ”状態。行列を避けて来場しても、食事にありつけない、トイレは依然として混雑、といった状況に直面したケースも多かった。
- また、雨天や風の強い日は、そもそも“快適に過ごす”こと自体が非常に困難。屋根のある場所や休憩所の数が限られているため、体力的にも精神的にも過酷な時間帯が続く。
- 子どもが疲れて寝てしまったが、どこにも寝かせられる場所がなかった。高齢者が長時間立ちっぱなしで、杖をついてふらついていた。──そんな現場レポートも複数ある。
つまり、「行ける時間帯」は存在しても、「安心して行ける時間帯」は、まだ存在しないのが実情だ。
では、今後行く予定のある人はどう備えればいいのか──
今後の来場者はどう備える?
雨の日に行くとどうなる?“万博難民”にならないためのチェックポイント
- 折りたたみ椅子・レインコート・非常食は必須中の必須。
- スマホ充電器とモバイルバッテリーは、情報収集・同行者との連絡・緊急時の救援要請に不可欠。バッテリーが切れれば、文字通り“孤立”する。
- トイレ場所は事前にMAPアプリで確認し、滞在エリアごとに2〜3か所は目星をつけておくのが理想。トイレ待機列で30分を無駄にするか否かは、この下準備にかかっている。
- さらに、ビニール袋(濡れた衣類やゴミの収納)、携帯カイロ、防水バッグの3点セットも有効だ。
- 地面が濡れていても休めるように、簡易マットや銀マットを持参していた人もいた。これらは座るためだけでなく、荷物置きや風よけにも使える。
要は「避難所に行くつもり」で装備を整えろ。万博は“お出かけ”ではなく、“遠征”であり、準災害下のフェスのようなものだと心得よ。
平日と土日で並び方は違う?SNS報告から見えた“空いてた日”
- 初日は日曜:18万人来場(過去最大)。これは過去の万博や大型イベントと比較しても突出した数字で、関係者の想定を大きく上回った動員数だった。
- 月曜日以降:10万人前後に落ち着いたという声もあるが、これはあくまでSNSなどでの推測レベル。ただ、入場待機時間が1時間以内で済んだという投稿が増えたことから、ある程度の減少は事実とみられる。
- 平日の午前中は、比較的スムーズという報告も多数ある。特に9時〜11時の時間帯に関しては「すんなり入れた」「トイレも空いていた」という証言が複数投稿されており、ピーク前に入場を済ませた人たちの満足度は高かった模様。
- 一方で、午後から訪れた人は「施設に入れなかった」「整理券がすでに終了していた」といった声も多く、時間帯による落差が激しい日が多い印象だ。
「平日×朝イチ」──これが狙い目という定説が生まれつつある。とはいえ確証はない。すべては天候・来場者の動き・施設の稼働状況によって変わる。あくまで現地報告ベースであり、過信は禁物だ。
入場ルート・飲食・移動で「絶対に後悔しないための注意点」は?
- 入口は複数調べておく(ゲートごとの混雑差あり)。できれば事前にマップを確認し、混雑が集中しがちな東ゲート以外の選択肢(南・西ゲートなど)が使えるか検討しておきたい。SNSや体験ブログを検索すれば、それぞれのゲートの待ち時間や導線の違いが分かる。
- 弁当・おにぎりは持参推奨(手荷物検査通過可能な範囲で)。おにぎり2個と水筒1本だけでも、精神的な余裕は全然違う。実際、昼食難民になった人の多くは「買えない」以前に「並ぶ元気がなくなった」と漏らしていた。
- ベンチは“濡れている前提”で動け。タオルや防水マット、折りたたみクッションがあるだけで、座れる確率がぐっと上がる。中には、立ったまま食事して転びそうになった人もいた。
- 靴は防水性のあるものを選ぶべき。足元が濡れて体温を奪われると、気力も一気に削られる。
- 荷物は背負えるリュック型で両手を空けること。傘を差しながら列に並ぶ、資料を見る、スマホを扱う──これらを同時にこなすためには、両手の自由が必要だ。
行くなら“野戦の覚悟”で挑め。万博はテーマパークじゃない、**今のところ“戦場”だ。**単なるお出かけ気分で挑んだ人から、まず脱落していく。それが現実だ。
まとめ
- 「並ばない万博」と言われていたが、実態は真逆。
- スシローで279組、くら寿司は8時間待ち。
- 雨と寒さで「座れない・食べられない・逃げられない」の三重苦。
- 並ばずに入れた人は、朝7時台+裏ゲートなど“条件付きの勝者”。
- 子連れ・高齢者に優しい時間帯は、現時点で「存在しない」。
- 必要なのは、期待よりも装備と覚悟。「避難所に行くつもり」で挑め。
要するに、情報に踊らされず、自分で見極めろってことだ。甘く見たら並ばされる。
次に並ぶのは、あなただ。
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